漢方薬はなんとなく体にやさしいというイメージを持っている方が多いと思います。
でも、漢方薬でも副作用やアレルギーが出ることがあります。
そこで、
どの漢方薬にどんな副作用があるのか
どうやって副作用を回避できるか
を解説します。
副作用を知っておくことで、症状が出た時にすぐ飲むのを止めたり、病院に相談に行けるようになります。
※参考文献
漢方薬事典(2012年主婦と生活社)・漢方薬の基本講座(2014年成美堂出版)・漢方薬の選び方使い方(2014年滋慶出版)
目次
漢方にも副作用がある
多くの人に「漢方薬は副作用がない」と思われています。
確かに、漢方薬は複数の生薬を組み合わせることで作用は最大限強め、毒性や不都合な作用は最小限に抑える工夫がされています。
でも、副作用が全く無いわけではありません。
西洋薬に比べると少ないですが、漢方薬でも副作用やアレルギーが起こることがあります。
副作用は生薬による
具体的な副作用を見ていく前に・・・
前提として、漢方薬はこのようにいくつかの「生薬」を組み合わせて作られています。
材料となる生薬はそれぞれ性質や効能が異なり、
漢方薬の副作用は、その漢方薬を構成している生薬によって決まります。
例えば、麻黄、附子などの生薬を含む漢方薬には、
- ・血圧上昇
- ・動悸
- ・発汗
- ・のぼせ
のような副作用が報告されています。
気になる副作用がある場合は、「葛根湯(かっこんとう)」などの漢方薬ではなく、それに含まれる生薬名で副作用を調べましょう。
各生薬の副作用
具体的には、それぞれの生薬に以下のような副作用が報告されています。
※良く処方される漢方薬を各生薬の含有量が多いものから順に記載しているので参考にしてください。
麻黄
麻黄の副作用
- ・血圧上昇
- ・動悸
- ・発汗
- ・食欲不振
- ・吐き気
麻黄が含まれる主な漢方薬
- ・越婢加朮湯 (麻黄6.0g)
- ・葛根湯 (麻黄4.0g)
- ・麻黄附子細辛湯 (麻黄4.0g)
- ・小青竜湯 (麻黄3.0g)
- ・防風通聖散 (麻黄1.2g)
桂皮
桂皮の副作用
- ・発疹
- ・掻痒(かゆみ)
桂皮が含まれる主な漢方薬
- ・桂枝茯苓丸 (桂皮4.0g)
- ・小建中湯 (桂皮4.0g)
- ・安中散 (桂皮4.0g)
- ・葛根湯 (桂皮3.0g)
- ・小青竜湯 (桂皮3.0g)
- ・柴胡桂枝湯 (桂皮2.5g)
- ・柴胡加竜骨牡蛎湯 (桂皮2.5g)
- ・五苓散 (桂皮2.0g)
- ・八味丸(別名:八味地黄丸) (桂皮1.0g)
甘草
甘草の副作用
- ・血圧上昇
- ・むくみ
- ・だるさ
甘草が含まれる主な漢方薬
- ・甘草湯 (甘草8.0g)
- ・小青竜湯 (甘草3.0g)
- ・加味逍遥散 (甘草3.0g)
- ・半夏瀉心湯 (甘草2.5g)
- ・葛根湯 (甘草2.0g)
- ・小柴胡湯 (甘草2.0g)
- ・小建中湯 (甘草2.0g)
- ・防風通聖散 (甘草2.0g)
- ・柴胡桂枝湯 (甘草1.5g)
- ・補中益気湯(別名:医王湯) (甘草1.5g)
- ・十味敗毒湯 (甘草1.5g)
- ・防已黄耆湯 (甘草1.5g)
大黄
大黄の副作用
- ・下痢
- ・腹痛
大黄が含まれる主な漢方薬
- ・大黄甘草湯 (大黄4.0g)
- ・大黄牡丹皮湯 (大黄2.0g)
- ・防風通聖散 (大黄1.5g)
- ・大柴胡湯 (大黄1.0~2.0g)
- ・柴胡加竜骨牡蛎湯 (大黄1.0g)
石膏
石膏の副作用
- ・胃もたれ
- ・食欲不振
- ・吐き気
石膏が含まれる主な漢方薬
- ・白虎加人参湯 (石膏15.0g)
- ・越婢加朮湯 (石膏8.0g)
- ・消風散 (石膏3.0g)
- ・防風通聖散 (石膏2.0g)
附子
附子の副作用
- ・血圧上昇
- ・動悸
- ・発汗
- ・のぼせ
附子が含まれる主な漢方薬
- ・八味丸(別名:八味地黄丸) (附子0.5~1.0g)
- ・真武湯 (附子1.0g)
- ・桂枝加苓朮附湯 (附子0.5g)
地黄
地黄の副作用
- ・胃もたれ
- ・食欲不振
- ・吐き気
地黄が含まれる主な漢方薬
- ・芎帰膠艾湯 (地黄6.0g)
- ・三物黄芩湯 (地黄6.0g)
- ・八味丸(別名:八味地黄丸) (地黄5.0g)
人参
人参の副作用
- ・発疹
- ・掻痒(かゆみ)
人参が含まれる主な漢方薬
- ・補中益気湯(別名:医王湯) (人参4.0g)
- ・小柴胡湯 (人参3.0g)
- ・加味帰脾湯 (人参3.0g)
- ・人参湯(別名:理中丸) (人参3.0g)
- ・半夏瀉心湯 (人参2.5g)
- ・柴胡加竜骨牡蛎湯 (人参2.5g)
- ・柴胡桂枝湯 (人参2.0g)
副作用の回避方法
どんな副作用が起こるか理解した所で、「副作用が起きないようにするにはどうしたらいいか」を説明します。
1.「証(しょう)」に合った漢方薬を飲む
「証」は漢方の基本概念で、生まれ持った体質も含めてその時点の患者の状態をいくつかのタイプに分けたものです。
この「証」によって処方される漢方薬が異なります。
例えば、
- ・体力のある人は「実証」
- ・虚弱体質の人は「虚証」
といったように人によって「証」が違います。
なので、同じ「寝つきが悪い」という症状でも、
- ・体力のある人は、黄連解毒湯。
- ・虚弱体質の人は、酸棗仁湯。
といったように、同じ症状でも「証」によって処方される漢方薬が違います。
「証」を間違えて漢方薬を飲むと、薬が効かないどころか副作用が現れてしまうことがあります。
この対応策として、飲もうとしている漢方薬をインターネットで検索して、「どんな体質に合う漢方薬なのか」を確認することをおすすめします。
もし、自分の体質や症状と合っていなそうであれば、飲むのを中止するか、少ない量から試して慎重に様子を見ましょう。
いくら病院処方といっても、漢方専門医ではない通常の医師は、証まで考えずに処方していることが多いので、自分でも勉強して注意することが必要です。
2.漫然と同じ薬を長期服用しない
「漢方薬は自然の材料で出来ているので作用がおだやか。」
「だから長く飲まないと効かない」
と思っている方が多いです。
でも、すべてがゆっくり効くのではなく、飲んで数十分で効果が出る漢方薬もあります。
例えば、
- ・風邪に使う「葛根湯」は、西洋薬より早く効く場合がある。
- ・こむらがえりに使う「芍薬甘草湯」は、数分で効く場合がある。
といったように、急性の病気にも効果を発揮します。
関連記事:【詳細解説】漢方薬の効果が出るまでの期間
それほど即効性のあるものもあるので、漫然と飲み続けないように注意しましょう。
新しい漢方薬を飲み始めて2週間は特に注意しましょう。
3.併用に注意する
漢方薬はいろいろな症状があっても、1種類の漢方薬で治療するのが基本です。
(たまに、刺激の強い漢方薬の場合は、胃腸障害を防ぐ別の漢方薬を併用することはあります。)
もし、併用する場合は、
「同じ生薬が多量に重ならないか」ということに注意しましょう。
特に注意が必要なのが、
「甘草」が重ならないか
です。
なぜなら、甘草は保険適用の漢方薬の約7割に含まれているため、重複しやすいです。
もし、甘草が重なると、偽アルドステロン症という重い副作用(血圧上昇、むくみなど)が起こる場合があります。
4.副作用を知っておく
自分が飲んでる漢方薬に含まれる生薬で起こる可能性のある副作用を知っておけば、
もしその症状が起きたときに、「これは副作用かもしれない」と判断し、服用をストップできます。
例えば「人参」の含まれた漢方薬を飲んで発疹が出来ても、知らなければ副作用だとは思わず飲み続けてしまうでしょう。
自分が今飲んでいる漢方薬だけでも、副作用を理解しておくと安心です。
漢方薬の副作用Q&A
Q.西洋薬と漢方薬を併用しても副作用は出ない?
西洋薬と漢方薬は、基本的には併用して問題ないです。
気になるとすれば…
反対の効果をもつ西洋薬と漢方薬を併用すると、効果を相殺 してしまいます。
例えば、この2つを併用すると、効果が相殺されて飲む意味がありません。
- ・熱を下げる 西洋薬
- ・体温を上げる 漢方薬
これは、自分で判断するのは難しいので病院で確認しましょう。
もし、併用する場合は、少し時間を空けて飲む と安心です。
例えば、食前に漢方薬を飲んで、食後に西洋薬を飲むと良いでしょう。
Q.重度の副作用が起こることもある?
慢性肝炎や肝硬変に使われた「小柴胡湯」の副作用で、1996年に間質性肺炎が起こり、患者さんが亡くなっています。
発症率は10万人に4人と非常にまれです。
原因は黄芩ではないか?といわれつつも、はっきりしたことはまだ分かっていません。
また、前章でも触れていますが、約7割の漢方薬に含まれ、一般用医薬品や食品にも広く使われている「甘草」では、
偽アルドステロン症という重い副作用が起こる場合があります。
これは、体内に塩分と水がたまって血圧上昇やむくみが起こり、体からカリウムが失われて、手足のだるさやしびれ、筋肉痛が現れるものです。
副作用に気づかずに飲み続けてしまうと、筋肉が壊れる、不整脈が起こるなどの危険な状態に至ることがあります。
ですので、このような副作用が見られたらすぐに服用を止めましょう。
まとめ
漢方薬でも副作用やアレルギーが起こることがある。
副作用は、漢方薬に含まれる生薬によって起こる。
副作用を回避するためには、
- ・「証」に合った漢方薬を飲む
- ・漫然と飲み続けない
- ・併用に注意する
- ・副作用を知っておく
といった対策をしましょう。